不動産売却
不動産査定の仕方は?流れや3つの算出方法を不動産のプロが詳しく解説
2025年12月20日

「所有する不動産を売りたい」「現在の価値を知りたい」と考えたとき、最初に行うのが「不動産査定」です。
しかし、「鑑定士と不動産会社、どちらに頼むべきか?」「査定額の決まり方は?」といった疑問を持つかもしれません。
不動産には定価がないため、正しい査定方法と適正価格を知ることが、売却成功への第一歩となります。
この記事では、不動産査定の基礎知識から、プロが用いる計算方法、査定額を左右する重要ポイントまで、詳しく解説します。
不動産鑑定士による査定の方法は?

「不動産査定」と聞くと、「不動産鑑定士」を思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかし、個人が自宅を売却する目的で不動産鑑定士に依頼することはほとんどありません。
不動産鑑定士が行うのは、「不動産鑑定評価」という、国土交通省の『不動産鑑定評価基準』に基づいた公的な評価です。
主に、相続税の申告や裁判での立証、企業の資産評価など、公的な証明が必要な場面で利用されます。
この鑑定評価書の発行には、数十万円以上の費用がかかる上、作成にも時間がかかります。
そのため、「市場でいくらで売れるか知りたい」という売却目的の一般的な査定では、次に説明する不動産会社の無料査定を利用するのが一般的です。
不動産会社が行う不動産査定の仕方(方法)

不動産会社が行う査定は、不動産鑑定士の「法的価値」ではなく、「現在の市場で、およそ3ヶ月以内に売れるだろう価格」を算出するものです。
これを「査定価格」と呼び、この査定は基本的に不動産会社から無料で提供されます。
査定方法には、「机上査定(簡易査定)」と「訪問査定(詳細査定)」の2種類があり、売却の検討状況に応じて使い分けが可能です。
机上査定
「机上査定」は、文字通り、現地を訪問せずにデータのみで概算価格を算出する方法です。「簡易査定」とも呼ばれます。
過去の成約事例や近隣の売り出し価格、公示地価、市場動向といったデータを基に、物件の立地、広さ、築年数を掛け合わせて価格を計算します。
【メリット】
最大のメリットは手軽さとスピードです。
現地への立会いが不要で、早ければ依頼当日、遅くとも2〜3日以内に結果が分かります。
「まずは相場を知りたい」「まだ売却するか分からない」段階の方に最適です。
誰にも会わずに済むため、プライバシーを重視する方にも利用しやすい方法です。
【デメリット】
データ上の計算であるため、精度の高さには限界があります。
例えば、室内が新品同様にリフォームされていても、逆に壁紙が剥がれてボロボロの状態でも、データ上は同じ築年数として扱われてしまいます。
そのため、実際の売却価格と数百万円のズレが生じる可能性もあります。
訪問査定
「訪問査定」は、不動産会社の担当者が実際に現地を訪れ、物件の状態を目視で確認した上で価格を算出する方法です。
「実査定」や「詳細査定」とも呼ばれます。
机上査定のデータに加え、日当たり、眺望、騒音、臭い、室内の使用状況、リフォームの有無、建物の傾きなど、データには表れない細かな要素までチェックします。
【メリット】
最大のメリットは査定価格の正確さです。
物件の個別要因(長所や短所)を全て加味するため、実際の売り出し価格に限りなく近い金額を知ることができます。
また、担当者と直接話せるため、売却の流れや税金の相談、「高く売るための具体的な方法」などのアドバイスも受けられます。
【デメリット】
現地調査のために日程調整が必要で、30分〜1時間程度の立ち合い時間が発生します。
また、部屋の中を見せるため、事前の片付けなどの準備が必要です。
売却することを前提としている場合は、訪問査定を受ける必要があります。
不動産査定で使われる3つの算出方法

不動産の価格を算出するためには、根拠となる計算方法があります。
不動産会社は、物件の種類(土地、戸建て、マンションなど)に応じて、主に以下の3つの手法を使い分けたり、組み合わせて査定を行います。
これらの計算方法を知ることで、提示された査定額の根拠をより深く理解できるようになるはずです。
原価法
「原価法」は、主に一戸建ての評価に用いられる非常にシンプルな手法です。
原価法では、土地と建物を別々に評価します。
まず、土地は「今、更地で購入したらいくらになるか」を計算します。次に、建物は「同じものを新築で建て直す費用(再調達原価)」を計算します。
そこから「築年数による劣化分(減価修正)」を差し引いて、現在の価値を算出します。
簡単に言えば、「新築費用 − 経過年数分の価値 = 現在の価値」という考え方です。
耐用年数に基づき計算されるため、築年数が浅いほど価格は高く、古いほど安くなります。
ただし、リフォームにより建物の寿命が延びている場合は、その分がプラス評価されることもあります。
取引事例比較法
「取引事例比較法」は、マンションや土地の査定で最も頻繁に使われる手法です。
これは、近隣エリアで、条件が似ている物件が過去にいくらで成約したか、あるいは現在いくらで売りに出されているかを基準とします。
それらの事例と対象物件を比較し、価格を決定します。
例えば、「同じ広さの近所のマンションが3,000万円で売れた。今回の物件はそれより築年数が5年古いが、角部屋で日当たりが良い」といった条件を比較します。
「築年数分として−100万円」「角部屋分として+50万円」のように補正を加えて価格を調整します。
この方法は市場の相場をダイレクトに反映できるため、説得力が高いのが特徴です。
類似物件の取引事例が多く存在するエリアで特に採用されます。
収益還元法
「収益還元法」は、主に投資用マンション、アパート、賃貸ビルなどの「収益物件」を査定する際に使われる手法です。
その物件が将来的にどれくらいの利益(家賃収入)を生み出すかという「稼ぐ力」に着目し、その利益から価格を逆算します。
居住用のマイホーム査定で使われることは少ないですが、「将来的に賃貸に出す可能性」がある物件や、オーナーチェンジ物件の売買ではこの方法が基準となります。
不動産査定の流れ

実際に不動産査定を依頼してから、査定結果が出るまでの一般的な流れをご紹介します。
スムーズに進めるために、全体のステップを把握しておきましょう。
1. 査定の依頼
不動産会社のWebサイトや電話から申し込みます。
物件の住所、種別、面積などの基本情報を伝えます。
2. 査定方法の選択
「机上査定」か「訪問査定」かを選びます。
急いで概算を知りたい場合は「机上査定」、正確な金額を知りたい場合は「訪問査定」を選びましょう。
3. 現地調査(訪問査定の場合)
担当者が訪問し、室内外の状況、境界杭の有無、周辺環境などを調査します。
役所での法令調査も併せて行われます。
4. 査定結果の報告
調査結果に基づき、査定書が作成されます。
「なぜこの金額になったのか」という根拠や、近隣の成約事例などの説明を受けます。
5. 媒介契約・売出し価格の決定
査定額に納得し、売却を依頼する場合は媒介契約を結びます。
査定額を参考に、売主様の希望を加味して「売却方法」や「売出し価格」を決定します。
不動産査定で重要な要素

査定価格は、単に「広さ」や「新しさ」だけで決まるものではありません。
プロの視点は多岐にわたりますが、特に価格に大きな影響を与える4つの重要要素について解説します。
物件の基本情報
査定額の最もベースとなるのが、物件そのもののスペックです。
築年数は新しいほど評価が高くなりますが、マンションの場合は管理状況も重視されます。
土地面積や建物面積はもちろん、間取りの使いやすさも重要です。
例えば、同じ面積でも部屋数が多すぎるより、トレンドに合った広めのLDKがある方が評価されやすい傾向にあります。
また、一戸建てでは構造(木造・鉄骨・RC)も耐用年数に関わるため重要です。
リフォーム履歴があれば、設備のプラス評価につながりますので、実施時期や内容を正確に伝えましょう。
物件の立地・周辺環境
「不動産は立地が全て」と言われるほど、立地の価値は絶対的です。
特に重視されるのが「交通利便性」で、最寄駅までの徒歩分数や急行停車駅かどうかは価格に直結します。
また、生活利便施設(スーパー、病院、銀行、公園など)までの距離や、学区の人気度もファミリー層向けの物件では重要視されます。
さらに、前面道路の幅員や接道状況、日当たり、眺望といった環境要因も大きく影響します。
市場の動向
不動産の価格は「生き物」であり、その時の経済状況や需給バランスによって変動します。
周辺エリアで「売り物件が少ない」時期であれば、希少価値が高まり、強気の価格でも売れる可能性があります。
逆に、近隣で似たような物件が多数売り出されていると、価格競争になり、査定額は厳しくなります。
また、住宅ローン金利の動向や、政府の住宅取得支援策(住宅ローン減税など)も買い手の購買意欲を左右します。
そのため、「売り時」を判断することも、査定の重要な要素となります。
法規制・権利関係
どんなに立地が良くても、法的な制限があると価値は大きく下がります。
例えば、「建ぺい率・容積率」の制限や、「用途地域」による建築可能な建物の制限です。
特に注意が必要なのが「再建築不可物件」で、今の建物を壊した後に新しい家を建てられない土地の場合、査定額は大幅に下がります。
また、隣地との境界が確定していない場合や、私道の通行権に関する取り決めが曖昧な場合も、売却時のトラブル要因となるため、マイナス評価や、解決を条件とした査定となることがあります。
まとめ
不動産査定は、単に価格を知るだけでなく、ご自身の資産の強みと弱みを客観的に把握し、最適な売却戦略を立てるための重要なステップです。
机上査定で相場を、訪問査定で正確な価値を知り、根拠に基づいた価格設定を行うことが、高値売却や早期成約への近道です。
最も重要なのは、「そのエリアの相場を熟知している不動産会社に依頼すること」です。
駅前不動産は、地域に根差した情報量とネットワークで、お客様の不動産の価値を最大限に見出します。
豊富な実績を持つプロがサポートいたしますので、まずは概算を知りたいという方も、ぜひお気軽に「無料査定」をご利用ください。







